近年何となくだが現代美術に関心を持ち始めていて、加えて福岡という土地とアジア諸国との歴史を考えると是非観ておいた方が良いと考え、殆ど何も知らないままの状態で行ってみた。
会場に足を踏み入れる前まではどうしても中世アジアの美術工芸の印象が頭から離れなかったが、実際に作品群を目の前にしてみると、そういう要素はエッセンスとして混ざってはいるものの、それは決して作品の主体ではないし、欧米諸国人の作品と何ら変わりはないように感じた。ただ作者とモチーフとなる人間がアジア人というだけである。詳しく語る知識もないので印象を述べる程度に留めておくが、次は一体どのような作品に出くわすのかワクワクしながら順路に従い足を進めた。このような気分で美術展を観るのは珍しく、楽しい経験であった。
この展覧会ではパフォーマンスやインスタレーションを写真に納めた作品がとくに印象に残った。スリランカ在住のプラディープ・タラワッタ(Pradeep Thalawatta)、カンボジア在住のアニッダ・ユー・アリ(Anida Yoeu Ali)、ベトナム在住のファン・クアン(Phan Quang)の三氏がそれに当たる。後述する今展覧会の公式サイト若しくは作家のサイトで詳細を参照されたい。
そして私が一番気に入ったのは、ヤン・ヨンリァン(楊泳梁/Yang Yongliang)の制作した映像作品だった。山水画の中に埋め込まれた都市の夜景、緻密に鏤められた都市の輝きが明滅し、時には移動し、蠢く様を9分間に渡って見せてくれる。繰り返し観ても飽きなかった。
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この展覧会を観るには、ワンデーパス(同日なら何度でも入場可)大人1500円と、フリーパス(2014年9月6日〜11月30日の会期中は何度でも入場可)大人2000円を支払う。福岡に滞在しながら制作し、会期中に作品を追加する予定の作家も居るそうなので、余さず観たいと考えた私はフリーパスを購入した。天神に用がある時を見計らって二回訪れてみたが、二人分増えただけであった。生来の気の短さ故か、未だ映像作品をまともに観ていないので次月辺りにまた訪れてみようと考えている。