寒風吹きすさぶ中、久し振りに展覧会へ。都合良く初日に行くことが出来たが、厳しい天候にも関わらず結構な人出だった。この展覧会は福岡を皮切りに、約一年をかけて愛知・福井・東京・宮城と巡回する予定であるようだ。
一昨年辺りから「北欧デザイン」と呼ばれるものが何となく気になっていて、一度時間を作って成り立ちや歴史を調べようと思っていたわりには全然やってはおらず、結局そのままになっていた。そんなずぼらな私には打って付けの企画展覧会である。
一般的には、フィンランド・デザインの根源は、20世紀初頭におこった民族主義運動の高まりにあったと言われている。ロシア支配下の大公国だったフィンランドは、1900年のパリ万国博覧会で始めて独立した展示館をもったが、そのできごとはフィンランドのデザインや建築の様式ばかりでなく、フィンランドの国としての運命をも形作ることになった。
日本経済新聞社分化事業部・キュレイターズ企画構成『Finnish Design 2017』日本経済新聞社 2017年 p.10
フィンランドは、1159年から1809年まで、スウェーデンに支配されていた。その後もロシアに干渉されていたが、ロシア革命の混乱を契機に1917年、独立する。したがって2017年はフィンランド独立100周年ということになる。およそ7世紀に及ぶ他国からの支配が続くなかで、19世紀にナショナリズムがせり上がっていく。そのきっかけとなったのが、エリアス・リョンロートがフィンランドの伝承や民話を集め編纂した民族叙事詩『カレワラ』だった。1835年、2巻32章のかたちで出版され、1849年、全50章の最終版が作られた。『カレワラ』は、フィンランド創世の神話からはじまる。それは、『日本書紀』や『聖書』などの多くが創世の神話からはじまることと共通している。民族のアイデンティティへの意識は、こうした創世の神話を必要としているといえるだろう。
日本経済新聞社分化事業部・キュレイターズ企画構成『Finnish Design 2017』日本経済新聞社 2017年 p.23
このように、フィンランドデザインとは、民族のアイデンティティを確立せんが為にフィンランドの人々が起こした運動の一部だったようである。そして会場内にも関連した記述があったと思うが、アールデコやバウハウスから手法を学び取り、フィンランドの伝統的な材料を使い、加工技術を更に発展させる事に拠り、現在へと続くフィンランド・デザインを作り上げていったと想像する。
この流れを知り得ただけでも私にとっては大変な収穫であるが、その他にも学びがあり、良い展覧会であった。
本展覧会では現行の食器メーカーからの展示もあり、全てではないが、展示されているのと同じ食器を物販コーナーで買う事が出来る。私はグラスを買った。衝動買いは出来るだけ控えようと考えているので散々迷ったが、実際に使ってみないと判らない事もある、という大義名分を都合良く思い出したので実行したのであった。
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