2017-02-27

吉田博展

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 去年放送された ETV の日曜美術館で紹介されていたのを観てかなり気になっていた画家(版画家)なのだけれど、アンコール放送の時は既に観ているのでスルーしたら、その際に今展覧会の紹介があったようだ。知人に教えられるまで気が付かなかったが、ちょうど街へ出る用事もあったので早速観てきた。
 番組の中では版画を中心に取り上げていたので、その前に油彩や水彩で描いていたという印象を余り持っていなかったが、今展覧会ではその辺りも多く展示されていた。油彩は輪郭が曖昧で朦朧体のような描き方をしていたのが意外であった。水彩もまた輪郭が曖昧な描き方であったが、こちらは色彩が少しはっきりしていた。模索を繰り返しながら、技術によって表現を変えながら、そうして木版画に辿り着いていく経過が伺える。

  • 中善寺 日光(明治27-32年 水彩・紙)
  • 日暮里(明治34-36年 水彩・紙)
  • 雪かき(明治35年以降 水彩・紙)
  • 朝(明治後期 水彩・紙)
  • 松(明治40年頃 水彩・紙)
  • 雪景(大正期? 絹本墨画)
  • 穂高山 渡邊版(大正10年 木版・紙)
  • 帆船 日中 渡邊版(大正10年 木版・紙)
  • エル キャピタン 米国シリーズ(大正14年 木版・紙)
  • ルガノ町 欧州シリーズ(大正14年 木版・紙)
  • 劒山の朝 日本アルプス十二題(大正15年 木版・紙)
  • 光る海 瀬戸内海集(大正15年 木版・紙)
  • 帆船 午後 瀬戸内海集(大正15年 木版・紙)
  • 朝日 富士拾景(大正15年 木版・紙)
  • 百花園の秋 東京拾二題(大正15年 木版・紙)
  • 雲井櫻(大正15年 木版・紙)
  • シンガポール 印度と東南アジア(昭和6年 木版・紙)
  • ベナレスのガット 印度と東南アジア(昭和6年 木版・紙》
  • 弘前城 櫻八題(昭和10年 木版・紙)
  • 初秋(昭和22年 油彩・カンバス)

 毎度のように気に入った作品をリストアップしていて気が付いた。今回の展示作品のおよそ七割は個人蔵であるようだ。これだけの数を借りてくるのは大変だっただろうなあ。

2017-02-15

宗像・沖ノ島と大和朝廷展

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 出土されるような太古の土器にはさして興味が湧かないので見送ろうと考えていた展覧会だったのだけれど、ちょうど出かける用事があったのと、この地方に於ける社会や文化の基礎となる部分を認識しておくのは必要な事のようにも思えたので行くことにした。
 展覧会のページを観て頂くと判るとおり、素焼きの土器の展示が多かった。私は陶器や磁器を鑑賞するのは結構好きだが、それが土器となると途端に興味を無くしてしまう。ただし火焔土器は面白いと思う。でもそれくらいである。勉強のつもりでさらにつらつらとと観ていくと「宗像君の宝玉 勾玉」が展示されていた。これは大変に美しい宝物であった。こういうアースカラーと、そこから一つ飛び抜けた彩度の高い色との組み合わせはとても心地良い。そしてそこから更に進むと奈良で出土した金製指輪福岡で出土した金製指輪韓国で出土した金製指輪が並べて展示されていた。この展示物は展覧会の中でも特に見どころとされていて、展示会のページにはこうある。

 沖ノ島の国宝を象徴する黄金に輝く指輪。シルクロードの流れを汲くむ黄金の指輪は、まさに日本とアジアのつながりを示す資料と言えるでしょう。新羅王の陵墓である皇南大塚南墳の出土品をはじめ、日本と韓国の指輪18点が一堂に会する史上初の試みです。

 確かに、いずれの地域の指輪も同じテイストである。5世紀頃の朝鮮と日本は、工芸的にはほぼ同じ文化を享受していたように思える。その美的表現は日本風でも、朝鮮風でも、中国風でもない。強いて言えばアジア風。いや、そうとも言い切れない気もする。例えば風の谷のナウシカ精霊の守り人に出て来るような、ユーラシア大陸の何処かとしか言えないような無国籍なテイストが在る。これはとても楽しい学びであり、もとともは観る気がなかった展覧会だっただけに、何だか得をした気分であった。