近年になって「書は格好良いのではないか」と思い始め、少しずつ興味を持ち始めた。とは言え、どこから手を付けて良いのかよく分からないので、何となく毛筆の教科書的な本や筆ペンを買って、封書や葉書の宛名書きを練習してみたりしていた。ほんのちょっとだけ上達したような気もするが、安定性に欠けるというか、自分が「ちゃんとした文字を書ける」ようになったようには思えない。しかしそういう感覚はずっと付きまとってくるものなのかも知れない。とすればやはり、良いものを見て、書いて、見て、書いてするしかないのだろう。と言うことで今回は九州国立博物館の王羲之と日本の書展を観に行った。絵画や彫刻なんかと同じように、気に入った展示品を羅列しておく。
- 妹至帖 王羲之筆(原跡)東晋時代(原跡)唐時代(模)
- 紫紙金字金光明最勝王経 巻第四 奈良時代
- 金剛般若経開題残巻 空海筆 平安時代
- 光定戒牒 嵯峨天皇筆 平安時代
- 小野道風像 伝頼寿筆 鎌倉時代
- 継色紙「あまつかぜ」 伝小野道風筆 平安時代
- 升色紙「いまはゝや」 伝藤原行成筆 平安時代
- 元永本古今和歌集 上巻 藤原定実筆 平安時代
- 関山号 宗峰妙超筆 鎌倉時代
- 伏見天皇御集 伏見天皇筆 鎌倉時代
- 源氏詞 尊円親王筆 南北朝時代
- 書状 淀殿筆 安土桃山〜江戸時代
- 賦青何連歌 近衛信尹筆 江戸時代
- 花卉鳥下絵古今集 和歌巻 本阿弥光悦筆 江戸時代
- 三十六歌仙帖 松花堂昭乗筆 江戸時代
- 偈頌「春」 木庵性瑫筆 江戸時代
- 七言絶句 太田蜀山人筆/鍬形蕙斎画 江戸時代
いろいろ見ていて思ったのは、書を見たり書いたりして楽しむには、一文字の座り、一行のリズム感や座り、紙面に対する文字列のバランス、というものに注視し、そして工夫するところではないだろうか。 暫く前にテレビ番組(世界ふれあい街歩きだったと思う)で、早朝の広場に集って過ごす中国の人びとの姿を映していた。その中で、大き目の筆に水を含ませて、石畳の地面に文字を書き連ねている男性が居た。書いた後には水跡が残るので文字を見て取れる。しかし暫くすれば乾いて消えてしまうので、同じ場所にまた書くことが出来る。この人は毎日こうやって何度も何度も書いて練習して、その鍛錬を喜びとしているのだろう。自分にそこまでの事が出来るとは思えないが、そこそこの見栄えで、楽しんで書けるようにはなりたいと思っている。