東山魁夷についてはちょっとしか知らなかったし、そのちょっとしか知らない中で「あまり興味は持てないかな」と思っていたので、九州国立博物館で展覧会が始まっても、8月に入って急に忙しくなった事もあって、何となく見送っていた。しかし、観に行った知人が良かったと言っていたし、ちょうど時間が少し空いたので、展覧会終了二日前の土曜日に無理矢理行ってきた。
ごく簡単に結果を言えば、予想以上に混雑していたし、予想以上に良かった。混雑しているのはまぁ、終了間際なので仕方がない。良かったのは自分でも意外な気がしたが、考えてみれば、これまでに観ていなかった作品が数多く展示されており、良いと思ったのはほぼそれらの中に在ったので以外だと感じるのは当然であった。寧ろ、何故これらの作品がもっと前面に出て来ていないのだろうと不思議に思ったくらいだ。それではいつものように、以下に列挙する。
- 秋翳 1958年
- 白夜光 1965年
- 月篁 1967年
- 春雪 1973年
- 晩鐘 1971年
- 桂林月夜 1976年
- 唐招提寺御影堂障壁画 山雲 1975年
- 唐招提寺御影堂障壁画 濤声 1975年
- 唐招提寺御影堂障壁画 黄山暁雲 1980年
- 唐招提寺御影堂障壁画 揚州薫風 1980年
- 唐招提寺御影堂障壁画 桂林月宵 1980年
特に良かったのは「秋翳」と「白夜光」。人が遠景の中に、気の遠くなるような静寂を見つめる時のあの感覚が、まざまざと蘇って来た。これまで絵画を観てそのような気分になるのは初めてのような気がして、とても素晴らしいと思った。
それと、唐招提寺御影堂障壁画の襖絵が良かった。これらも吸い込まれてしまうような感覚を呼び起こす絵だが、それを襖絵にするという発想が素晴らしく、これらの絵に囲まれた畳の部屋で数時間を過ごしてみたいと思った。
因みに、変わり際に売っている図録を眺めてみたが、上記の絵を実際に目にした時の感覚はまったく起きなかった。それは画面の大きさのせいなのか、それとも印刷によって色彩が呼び起こす効果が失われてしまったのかは判らないが、それが得られないのなら必要ないと思って買わなかった。