2016-08-31

東山魁夷展

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 東山魁夷についてはちょっとしか知らなかったし、そのちょっとしか知らない中で「あまり興味は持てないかな」と思っていたので、九州国立博物館で展覧会が始まっても、8月に入って急に忙しくなった事もあって、何となく見送っていた。しかし、観に行った知人が良かったと言っていたし、ちょうど時間が少し空いたので、展覧会終了二日前の土曜日に無理矢理行ってきた。
 ごく簡単に結果を言えば、予想以上に混雑していたし、予想以上に良かった。混雑しているのはまぁ、終了間際なので仕方がない。良かったのは自分でも意外な気がしたが、考えてみれば、これまでに観ていなかった作品が数多く展示されており、良いと思ったのはほぼそれらの中に在ったので以外だと感じるのは当然であった。寧ろ、何故これらの作品がもっと前面に出て来ていないのだろうと不思議に思ったくらいだ。それではいつものように、以下に列挙する。

  • 秋翳 1958年
  • 白夜光 1965年
  • 月篁 1967年
  • 春雪 1973年
  • 晩鐘 1971年
  • 桂林月夜 1976年
  • 唐招提寺御影堂障壁画 山雲 1975年
  • 唐招提寺御影堂障壁画 濤声 1975年
  • 唐招提寺御影堂障壁画 黄山暁雲 1980年
  • 唐招提寺御影堂障壁画 揚州薫風 1980年
  • 唐招提寺御影堂障壁画 桂林月宵 1980年

 特に良かったのは「秋翳」と「白夜光」。人が遠景の中に、気の遠くなるような静寂を見つめる時のあの感覚が、まざまざと蘇って来た。これまで絵画を観てそのような気分になるのは初めてのような気がして、とても素晴らしいと思った。
 それと、唐招提寺御影堂障壁画の襖絵が良かった。これらも吸い込まれてしまうような感覚を呼び起こす絵だが、それを襖絵にするという発想が素晴らしく、これらの絵に囲まれた畳の部屋で数時間を過ごしてみたいと思った。

 因みに、変わり際に売っている図録を眺めてみたが、上記の絵を実際に目にした時の感覚はまったく起きなかった。それは画面の大きさのせいなのか、それとも印刷によって色彩が呼び起こす効果が失われてしまったのかは判らないが、それが得られないのなら必要ないと思って買わなかった。

2016-08-29

ゴジラ展

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 もう一月以上前になるが、福岡市美術館のゴジラ展を観に行った。展示内容は多岐に渡り、スーツ(着ぐるみ)・ジオラマ・模型・設計図・スケッチ・資料・雑誌等々がずらりと陳列されていた。それらが「昭和ゴジラ」「平成ゴジラ」「ミレニアムゴジラ」と年代別に類型化したものを、何故かゴチャ混ぜにして展示されていた。一応キャプションにはどの年代の物か判るようにゴジラの影絵が印されていたが、慣れるまではそれぞれのゴジラのシルエットの差違が判りにくかった。しかし、内容自体はなかなか面白かった。個人的には、模型や設計雨、スケッチの類いが興味深かった。例えば、出品リストから抜粋すると以下のようなもの。

  • ムーンライト SY-3 デザイン画(青焼き) 豊島睦画 1968年 「怪獣送信劇」
  • 戦艦三笠 造形用図面 東宝特殊美術係画 1969年 「日本海大海戦」
  • 三原山火口 超音波発信機 造形用図面 1984年 「ゴジラ」
  • 首都防衛戦闘機スーパー X 内部図解 長沼孝画 1984年 「ゴジラ」
  • スーパー X 模型 1989年 「ゴジラ vs ビオランテ」
  • 特殊潜航艇さつま 模型 2001年 「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」
  • ゴジラ 2000 ミレニアム 造形デザイン 酒井ゆうじ造形 1999年 「ゴジラ 2000 ミレニアム」

 実を言えば、私は「昭和ゴジラ」以外は全く観ていない。もし観ていたらもっと楽しめたのだろう。惜しい気はするが、今更仕方がない。ところで、現在ロードショー中の「シン・ゴジラ」は周囲の評判が非常に良い。観ようか観まいか、悩み中である。

2016-05-31

色彩の奇跡 印象派展

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 そう言えば福岡県立美術館には帰福してから、どころかもう25年くらい行ってないなと思い出し、ついでなので展覧会にも行ってきた。
 これまで印象派の絵画はそれなりに観てきているし、好きな絵は何枚も在る。しかし勉強はしていなかった。西洋美術史の授業は出席するだけでまともに耳を傾けた覚えもない。なのでこの展覧会は、改めて学ぶ良い機会となった。前身となるバルビゾン派から始まり、印象派の形成、そして新印象主義・象徴主義・フォービズムと連なる流れをほぼ時系列に展示しており、僕は初めて印象派が発生した意味を理解した気がした。
 展示内容はどちらかと言えば地味な作品が多かったが、光が色彩となり、それが目の前の事象として構成されている作品がもっともそれらしいような気がする。以下にそれらを羅列する。

  • 「エクス=アン=プロヴァンス西部の風景」ポール・セザンヌ 1885年頃
  • 「タチアオイの中に立つ子供」ベルト・モリゾ 1881年
  • 「セーヌ川、クルブヴォワにて」ポール・シニャック 1883年
  • 「アルルのはね橋」フィンセント・ファン・ゴッホ 1888年
  • 「ラングランド湾」アルフレッド・シスレー 1897年
  • 「川辺のプロムナード」アシール・ロージェ 1888年
  • 「北海沿岸の村」アルフレッド・ウィリアム・フィンチ 1889年頃
  • 「サン=トロペ」マクシミリアン・リュス 1892年
  • 「コルシカ島、古い風車」アンリ・マティス 1898年
  • 「パリ郊外」アルベール・マルケ 1899年
  • 「フルーリの家」キース・ヴァン・ドンゲン 1905年
  • 「シャトゥー橋」モーリス・ド・ヴラマンク 1908年
  • 「フラウエンキームゼーにて」ヴィルヘルム・トリューブナー 1891年頃
  • 「庭に佇む画家の3人の娘たち」フリッツ・フォン・ウーデ 1885年頃

2016-02-29

アール・ヌーヴォーのガラス展

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 福岡市博物館にて開催中の、デュッセルドルフ美術館所蔵のアール・ヌーヴォー時代のガラスの展示を観てきた。アール・ヌーヴォー時代のガラス器の展示は、ずっと以前に東京でも場所と時期を変えて二回ほど観た事はあったが、今回は観た事のない物ばかりであった。その事含め、展示数も多くて見応えがあった。ただし、展示の仕方がどうにも下手であったように思う。後半のコーナーは天井の照明を落とし、什器の中でスポット照明を器に当てるという手法が取られていて、展示されているガラス器をいかに美しく見せるかを工夫されていたように思う。しかし前半のコーナーはいかにも博物館的な資料の展示という様子であり、器の良さが伝わりづらいものとなってしまっていた。その点が非常に残念である。

2016-01-20

日韓近代美術家のまなざし展

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 現在福岡アジア美術館にて開催されている。新羅から李王朝までの博物学的な美術品や、現代美術の展示は観た事があったが、近世・近代の朝鮮の美術に関しては全く知らない事を不思議に思っていたので、見てみた。日本人が朝鮮で描いたものや、朝鮮人が日本で描いたものを集めているせいなのか、この時代の日本や朝鮮は、ともに同じような近代西洋画の教育を受けているような印象を受けた。色彩やモチーフがよく似ているのだ。更にこの展示では、日本人も朝鮮人も朝鮮人を描いているので、並べると日本人が描いたものなのか、それとも朝鮮人が描いたものなのか全く見分けが付かない。その事自体が良い事なのかどうかは判らないが、意外な知見を得る事が出来たて良かった。